
|
ATOLL/L'ARAIGNEE-MAL(邦題:夢魔 1975年))
70年代のフランスのプログレッシブロックバンドのセカンドアルバム。「仏のイエス」などと紹介されるのだが、このアルバムはアンサンブルとソロパートのバランスのとれた、フランスならではのヨーロッパ的構築美を感じさせるアルバムとなっている。その要因として、フランス語による独特な質感を持ったボーカルとこのアルバムのみ参加したヴァイオリンニストの演奏があげられる。特にこのジャズ出身と思われるヴァイオリニストの、確かなテクニックを持ちながらクラシカルな響きを大事にしたバイオリンがこのアルバム全体のカラーをコントロールしている。特に、かすかに狂喜を感じさせる1曲目での優美なヒステリックさ、3曲目でのギターとのバトルでの艶やかなアドリブソロは見事である。
|

|
MAGMA/LIVE(1975年)
フランスを代表するプログレッシブジャズロックバンドの2枚組ライブアルバム。彼らの音楽性は、重厚的確なリズム隊の上で男女コーラス隊やギターなどのリード楽器がのり、偏執的に繰り返される変拍子のフレーズを中心とした楽曲を盛り上げていくといった感じのものだ。ジャズヴァイオリンニストとして有名なDidier Lockwoodが10代の若さでMagmaに参加、このライブアルバムではきしるような音色のバイオリンをものすごいスピードでヒステリックに演奏している。特にアルバムラストのMekanik Zainではインタープレイの中核として、高速リフの上ですさまじいソロを取っている。バイオリンである必然性には考慮の余地はあるものの、そのプレイは一聴する価値は十分にある。 |

|
ZAO/Z=7L(1973年)
MAGMAに在籍していたSAX奏者ヨシコ・セファーが結成した異色のジャズロックバンドZAOのファースト。彼のSAXにkey、b,dr,vil、女性ボーカルという編成だが、女性ボーカルの色気のかけらもない攻撃的なだみ声スキャットボーカルを全面に、東欧的スケールにのって各楽器がユニゾン、そのエキゾチックな変拍子満載の楽曲は、正直な所相当に個性的で、聞く人を選ぶ。メンバーは全員テクニカルだが、いわゆるソロの応酬を一切廃している所がこのアルバムの独特の個性を作っている。バイオリンニストも健闘しているが、この編成にバイオリンニストが必要なのかどうかというといささか疑問の残る所だ。
|

|
ZAO/KAWANA(1976年)
70年代初頭のフレンチジャズロックバンドZAOの4枚目は、Sax、Key、b,drという編成にヴァイオリンでDidier lockwoodが参加、スピーディで熱い演奏を聞かせる名盤となった。前作までにあった構築性は影を潜め、Saxとヴァイオリンを中心とした楽器同士のインタープレイが聴き所。とはいっても、いわゆるフュージョンとは異なり、東欧的な和音、スケール、クラシカルなピアノが独特の荘厳な音世界を作っている。ヴァイオリンはいわゆるクラシカルな音色を聴かせるものではなく、線の細い神経質なもの。1曲目では擦過音を生かしたパーカッシブな重音が独特の雰囲気を作っていて印象的だ。しかしLockwoodはこのアルバム1枚でZAOを脱退した。
|

|
Zao/Live(1976年録音・2003年発表)
鬼才サックス奏者ヨシコ・セファーを中心に結成されたジャズロックバンドZAOは、Didier Lockwoodが新加入しSefferとガップリよつに組んでインタープレイを
繰り広げる傑作「KAWANA」を76年に発表した。しかしその後Sefferが脱退、
ヴァイオリン、Key、b、drという4人編成になってしまったそんな時期のライブが最近発掘された。
Seffer脱退直後ということで、ソロパートの大部分をLockwoodがとっているのだが、
東欧系のスケールによるエスニック風のかっこよいジャズロックナンバーでひたすらヒステリックな
ソロを弾きまくっていてこれがすばらしい。とにかく畳み掛けるようなソロは圧巻で
全くあきさせるところがない。発掘音源はえてして音質、内容で期待を裏切ることが多いが、
このアルバムについては全く問題なし。音質は完璧ではないが発掘音源としては十分のもので、
多少荒い音が逆にライブの熱気を伝えてくれている。というわけでLockwoodのNew Worldあたりが気に入った方は是非。 |

|
WAPASSOU/Messe en re mineur(1976年)
フランスのプログレバンドWAPASSOUはKey,g,女性Voにヴァイオリンというリズムセクションのない風変わりな4人編成のバンド。また女性ボーカルも、通常のボーカルではなくスキャットである。その音楽性はエレクトリックミサという宣伝文句のイメージどおり、オルガンを中心としたキーボードの上で、宗教音楽のような楽曲がアルバム通して1曲、延々と続くというものだ。楽曲は物悲しいメロディが淡々と変化しながら流れていくといった印象で、テクニックで聞かせるという感じでもないが、これはこれで独特の雰囲気があり一つの世界を作っている。深いリバーブのかかった音色のヴァイオリンは、主旋律はほとんど担当せず、楽曲のバックで淡々と鳴り続けたり、時に錯乱したようなソロを弾いたりすることで不思議な存在感を発揮している。
|

|
TERPANDRE/TERPANDRE(1980年)
フランスのプログレッシブロックバンドTERPANDREの唯一のアルバム。メンバーは、g、key×2人、ヴァイオリン、b、drで、
キーボードを中心としたシンフォニックロックとフュージョンの中間のようなサウンドのバンド。所謂ユーロプログレというジャンルで
それなりの評価があるらしいこと、参加しているヴァイオリンのPatrick Tillmanは、オムニバスの「Violin Connection」や
「Onztet de Violon Jazz」などにも参加しているということで聴いてみたのだが、印象は一言で言うと中途半端。1曲目こそ、
もったりしているが分厚いキーボードによる大げさなオープニングの後に、いかにも70年代末のフュージョンっぽいヴァイオリンがソロをとり、ちょっとは興味深かったが、それ以外の曲でヴァイオリンが目立つことはない。楽曲自体は穏やかな、いまいち印象に残らない地味なもの。たまにはっとする音使いもあるがメロディが弱いのが痛い。 |

|
Forgas Band Phenomena/SOLEIL12(2005年)
70年代から活動するドラマーPatrick ForgasをリーダーとするフランスのジャズロックバンドPhenomenaのライブ録音による最新アルバム。ギター、キーボード、ヴァイオリン、サックスなど総勢8人にも及ぶメンバーによって聴かれる音はメロディアスでリリカルな黒っぽさ皆無のジャズロック。マリンバのようにキラキラときらめくキーボードをバックに各種リード楽器がユニゾン、アンサンブルを決める作風で非常に聴き易いが場面によってはカンタベリー系の香りもする。ヴァイオリンは流麗なクラシック風の音色で、ノリはあまり感じられないが、こういった音楽性には丁度いい感じだ。楽器の数が多い割にはフューチャーされソロも達者にこなし楽曲のやわらかい部分をになっている。ちなみにべーシストは日本人にようだ。
|