アルバムガイド ロックヴァイオリニスト−Michel Ripoche篇

フランスのヴァイオリニストMichel Ripoche。70年代初頭にZooというブラスロックバンドに参加、その後はVangelisのアルバムへの客演、ソロでの活動が知られる人物。現在はクレツマー系の音楽をやっているようだ。
ブラスロックバンドZooはブラスでありながらヴァイオリンが活躍する非常に面白いバンドなのでヴァイオリンファンの方には是非聴いていただきたい。ソロ関連であれば「Michel Ripoche & Andre Demay/Contes Musicaux」がお薦めです。 (2013年9月15日新設)

「Zoo/Hard Times Good Times」を追加しました(2016/3/31)

Michel Ripoche /Equinoxe(1975年)

1970年前後に活動したブラスロックバンドZooへの参加やVangelisのアルバムへの客演で知られるヴァイオリン奏者Michel Ripocheの1stソロ。全体の印象としては明るめのフュージョンよりジャズロック。 同時代のMichal Urbaniakのジャズロック作品の癖を取り少し薄味にしたような印象か。エレクトリックヴァイオリンの音色とかエフェクトのかけ方などにも近しいものを感じるのは同時代ならではか。 時々ストリングスアンサンブルによる室内楽調の曲がはさまれるのがこのアルバムならではの特徴。それなりにいろんなことをやっているし悪くはないのだが、トータルとしてはどうにも面白みに欠ける印象がぬぐえないか。 本当に悪くないのだが。過去に在籍していたZooではサックスも演奏していた彼だが、このアルバムではサックス演奏は一切ない。Zooとの音楽的なつながりも感じられないのがなんとも不思議だ。

Michel Ripoche & Andre Demay/Contes Musicaux(1977年)

フランスのヴァイオリンニストMichel RipocheとギターリストAndre Demay連名名義のアルバム。実際にはこの2人にパーカッショニストCharles Benarochを加えた編成だが、内容は、ダークで複雑なシーケンスフレーズを弾く エレアコ、せわしなく動くパーカッションの上で粘り気のあるダークなエレクトリックヴァイオリンがソロを弾きまくるというもので、印象としては第3期King Crimsonをアコースティック編成にしてジャズロック色と エスニック色を加味したといった感じ。上記ソロ作を面白みに欠けるという風に書いたが、こちらは一癖も二癖もあって非常に面白い。この激しい弾きまくりサウンドは相当にプログレッシブロック受けするもの。 おそらくCD化はされてないが探してみる価値はあります。

Michel Ripoche/VOLUPTA (1980年)

前作から5年をおいてのカナダモントリオール録音のソロ第2作。ただAndre DemayとのDuo作から引き続いてDemay、Charles Benarochとも参加していることもあって、音楽性としても前ソロ作よりはAndre DemayとのDuo作のダークで エスニックなジャズロックという路線を引き継いでいる。もちろんそのままではなく、エスニックな楽曲はよりわかりやすい形でエスニック感を出すなどキャッチーにしあげている印象で、Duo作ほどのダークネスさ加減や 緊張感は薄れている。ということで個人的には「Contes Musicaux」の方を押すが、そちらが気に入った方はこちらもどうぞ。

ZOO/ZOO(1969年)

フレンチロック黎明期のブラスジャズロックバンドZooの1stアルバム。この1stでは9人編成でブルース色の強いファンキーなジャズロックを演奏。英語の歌詞で全体にブリティッシュっぽい印象もありつつ、どこかラウンジ的な おしゃれな感じがヨーロッパならではという印象を与えるオリジナリティの高いバンドだ。特にサックス担当のMichel Ripoche、Daniel Carletの2人ともヴァイオリンも兼務しており、要所要所でストリングスやヴァイオリンを 差し込むあたりがそういった印象を増しているのかもしれない。こういった音楽性でこれだけヴァイオリンが絡むバンドもなかなかいない。編成的にはThe Flockに近いがこちらの方が洗練されていてユニークだ。4曲目の 「Rhythm & Bossa」などはこのbandならではの魅力が全開。途中で展開されるすすり泣くようなよれたヴァイオリンソロがまた素晴らしい。2ndに比べるとちょっと音が古い印象はあるがそれでも聴く価値のある良作だ。

ZOO/I Shall Be Free(1970年)

Michel Ripocheが参加したブラスロックバンドZooの2ndアルバム。本作ではメンバーは7人に減ったものの前作同様に力強いファンキーソウルジャズロックを展開。前作に録音も向上。音楽的にもより洗練された印象で、 前作に感じられたラウンジっぽさやごった煮感は薄れたもののパワフルでソウルフルなサウンドは一級品。一方でそんなファンキーのサウンドなのにMichel Ripoche、Daniel Carletの2人がツインでヴァイオリンソロを取り巻くる インスト曲があったりとプログレ的な展開も健在。ヴァイオリンについてはさらにストリングス的なバッキングをしたり、ラスト曲ではカントリーフィドル的なスタイルを見せたりと本当に多様な使われ方をしている。 ヴァイオリン好きの方は是非一聴を。ちなみにZooはこのあともう1作発表して解散している。



ZOO/Hard Times Good Times(1972年)

前作の後、ギターリストが脱退し、キーボーディストがギターも兼務するというメンバーチェンジがあって発表された3作目にして最終作。前作ではわりと骨太なファンク・ブルース色を方向性の核としてスタイルが固まってきた印象があったのだが、本作ではAtomic Roosterのような骨太でファンキーなハードロックサウンドがあるかと思えば、アーサーブラウンかという大げさなサイケソウル、はたまたフィドルがリードするトラッド調インストだったり、フルートをフューチャーしたサイケポップだったり穏やかなバラードナンバーだったりと音楽性が見事にバラバラ。ホーンがかっこよく決めたかと思えばストリングスがグッともりあげ、ソロではヴァイオリンがフィドルチックによれたソロをとる・・・と1曲の中でも好き放題。そんなやりたい放題でもどの曲も彼ららしくかっこよかったりするから見事。もちろん今の時代からすると古いところもあるが音楽性の高さはすばらしいので是非ご一聴を。

Vangelis/The Dragon(1971年録音)

のちに「ブレードランナー」や「炎のランナー」のテーマなどで有名になるシンセ奏者ヴァンゲリスはもともとギリシャのAPHRODITE'S CHILDというプログレバンドに参加、ソロ転身後も70年代はプログレ色の強いアルバムを 発表している。そんなVangelisの70年代の作品にMichel Ripocheがたびたび参加。この作品は71年に行われたセッションを収録したアルバムで旧A面を占める表題曲でバルカン半島の民族音楽色が濃い呪術的な反復サウンドを バックに怪しげなソロを延々ととっている。そういった民族音楽テイストのあるジャズロックサウンドが好きな人は気に入るであろうサウンド。ちなみに同時期に収録された「Hypothesis」でもRipocheは参加、よりフリーな セッションの中Ripocheはアルバム最後の4分になってやっと登場するのだがヒステリックでサイケデリックなソロで、一気に場をかっさらっている。他に79年の「Chaina」にて「Plum Blopssom」という曲で哀感のある 独特のアコースティックソロをフューチャーされている。


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