アルバムガイド ロックヴァイオリン−SAGRADO CORACAO DA TERRA篇

Sagradoはブラジル有数の映画音楽などの作曲家でありヴァイオリンニストであるMarcus Vianaをリーダーとしたシンフォニックロックバンド。その音楽性は、ドラマチックで暖かみのあるシンフォニックロックでプログレッシブロックとして 語られるが、難解さはなく万人に受けるポピュラリティのある音である。ヴァイオリンはいかにもエレクトリックという飄々としたもので、華やかさを演出している。Marcus Vianaは自作の映画音楽やCM音楽などを集めたソロアルバムなども多数発表しているが バンド同様、暖かいメロディによるシンフォニックな作品が多い。プログレ系輸入盤店でないと置いてないので、ネットの通販などを利用しましょう。

SAGRADO CORACAO DA TERRA/
           SAGRADO CORACAO DA TERRA(1985年)

ヴァイオリンニストMarcus Vianaをリーダーとするブラジルのプログレッシブロックバンドのデビュー作。女性ボーカルにg,key,b,dr、 ヴァイオリンという編成。5枚のアルバムで一番ヴァイオリンを前面にフューチャーしていて、エッジを立たせない飄々とした エレクトリックヴァイオリンの幻惑的な音色が全編を彩っている。Sagradならではのドラマチックで明るい音楽性はすでに 確立されているものの、インストパートとボーカルパートが曲ごとに完全に分かれていて、そのあたりの印象からか全作品の中で 一番プログレッシブロックぽいともいえる。9曲目などはこのバンドにしては珍しくアコースティックバイオリンの音色でのスピーディなソロを聴くことができて印象的。

SAGRADO CORACAO DA TERRA/FLECHA(1987年)

ヴァイオリンニストをリーダーとするブラジルのシンフォニックプログレバンド。ラテン系という出自のためか、クラシックをベースとしながら暗くなることがなく、全編さわやかで暖かいシンフォニックな音作りとなっている。このアルバムではA面はボーカルメイン、B面はインスト重視の大曲という構成になっている。1曲目はブラジルの人気番組の主題歌ということで、全編エレキバイオリンがバックで弾きまくるアップテンポなボーカルナンバー、残りの楽曲はゆったり目のテンポの佳曲が並ぶ。一転B面はインストメインの大曲が並びその印象は宇宙の広大さを感じさせるような広がりのあるものだ。エレキバイオリンの音はクラシック系で軽やかで透明感はあるが、力強さ、線の太さは感じられない。

SAGRADO/FAROL DA LIBERDADE(1991年)

ブラジルのロックバンドSagradoの3作目。前作から一転、ほとんどの楽曲をボーカルナンバーが占めていながらもそのバックでヴァイオリンが全編大活躍、ポップでかつドラマチックなシンフォニックロックの名盤となった。とにかくインスト部とボーカルのバランスがよく、適度にまとまりつつ適度におおげさといった感じで、あきさせずに一気に聞ける。エレクトリックバイオリンはどこまでも軽やかに、重音のバッキングからソロと大活躍。暖かく、美しいSAGRAD独自の音楽性が完全に確立された。個人的には6曲目が最高。エレクトリックヴァイオリンの魅力を語る上では欠かせないアルバムであるとともに、プログレということ抜きに万人に薦められる名アルバムだ。

SAGRADO/GRANDE ESPIRITO(1994年)

ジャケットの印象どおりワールドミュージックという雰囲気が強くなった4作目。前作が緻密に作りこまれた作品という感じなのに対し、今回は力強さを感じさせるコンセプト重視の壮大なロックシンフォニーという印象のアルバムとなった。3曲目はセカンドに入っていた曲の再演だが、ヴァイオリンがディストーションを効かせた音色で骨太なソロを聴かせるあたりは今までにない要素だ。5曲目はゲストボーカルが歌い上げる壮大なボーカルナンバー、7曲目はインドや中東の民俗音楽の要素も取り込んだ変幻自在のインスト、そしてラストに13分におよぶドラマチックな大曲とどこまでもダイナミックな展開は圧巻だ。

SAGRADO/A Leste do Sol,Oeste da Lua(2000年)

5枚目となるこのアルバムでは、バンドというよりもリーダーのMarcus Vianaを中心としたセッションといった感じのアルバムとなっている。曲数の多さもあって収録されている曲の印象はばらばらで、(「月の光」や「蝶々婦人」などクラシックのカバーやピアノのソロ曲まで含まれる)アルバム全体の印象は弱く、番外編といった感がある。それぞれの曲の完成度は決して低くないが、ぬきんでてこれ、という曲がないのも事実だ。ヴァイオリンは全編で聴けるが、総じてバッキング中心で控えめ。その中で10曲目のクラシカルなソロパートは印象的だ。もう少し曲数をしぼって構成を考えれば、もっといいアルバムになったような気がする。

Marcus Viana/A IDADE DA LOBA(1995年)

ブラジルのプログレバンドSagradのリーダーでありヴァイオリンニストであるMarcusのソロアルバム。彼は元々がクラシック教育を受けた人であり音楽業界での主な仕事が、映画音楽や環境音楽である。そんなわけでここで聴かれる音楽は、映画的広がりを持つ壮大なシンフォニーだ。(ライナーが読めないので何とも言えないがもしかしたら何かのサントラなのかもしれない。)その音楽はリズム隊不在で、オーケストラ、キーボードが中心。彼自身要所要所でエレクトリックバイオリンを奏でているが、それはメインではなく、あくまでもコンポーサーとしての立場からのソロアルバムといえる。その暖かく美しい音楽は、ポップスの範疇からは相当にはずれるが、それでも相当に聞き応えがあるすばらしいものだ。

Marcus Viana・Teresa Madeira/CHIQUINHA GONZAGA(1999年)

ブラジルの19世紀後半に登場したショーロミュージックの名作曲家シキーニャ・ゴンザーガの楽曲を演奏したアルバム。ショーロミュージックとは19世紀後半にブラジルの街頭で、ギター、ヴァイオリン、フルートなどによって演奏された大衆音楽だ。ただこのアルバムではピアノ、ヴァイオリンによる演奏ということもあって、そういった大衆性はあまり感じられず、哀愁感のあるメロディをもった類型的なセミクラシック作品という雰囲気になっており、残念ながらあまり印象に残らなかった。ちなみにヴァイオリンのMarcus VianaはプログレバンドSagradや映画音楽など多彩な活動をしている。

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