アルバムガイド ロックヴァイオリン Premiata Forneria Marconi篇

イタリアを代表するプログレッシブロックバンドとして名高いPremiata Forneria Marrconi。71年にデビューした彼らは、ELPが作ったマンティコアレーベルによって世界デビュー、そのシンフォニックで躍動感のある完成度の高い音楽性によりおりからのプログレブームの中、アメリカや日本でも人気を博します。ただ、70年後半は地中海音楽的な味わいのジャズロック路線に軌道修正、さらに80年代には通常のポップよりロックへと音楽性を変化します。87年に一度解散しますが、90年代後半に再結成、以後は円熟したプログレ路線で 現在まで順調に活動しています。さてPFMには時期によってMauro Pagani、Gregory Block、Lucio Fabbriの3人のヴァイオリニストが参加しています。プログレッシブロックファンには、叙情的でシンフォニックなMauro Pagani在籍時代に人気が集中していますが、ヴァイオリンという点では、後の2人も同等以上に魅力的なプレイヤーです。Paganiがスタジオでは生ヴァイオリンにこだわり、ライブでもどちらかというと神経質なタッチだったのに対し、Gregory Blockはアメリカ出身ということでよりテクニカルでロックっぽいしっかりした演奏が持ち味でした。Fabbriは参加時期がポップス路線だったので、あまりヴァイオリンを弾くシーンは多くありませんでしたが、エレクトリックでのざらついた音色での太みのある粘っこいソロはすばらしく、是非一聴をお勧めします。


ヴァイオリン入りプログレとしてのPFMを聞きたいなら、黄金期の作品よりベスト選曲の「Live In Japan」から聴くほうがいいかもしれません。Pagani期はどれも秀作ですが、ヴァイオリンのフューチャー度という点ではまずは「Photos Of The Gohst」からでしょうか。いわゆるPFMの全盛期とは違いますがヴァイオリン好きの方にはGregory期の「Jet Rag」、Fabbri期の「Miss Baker」あたりも是非聴いてみてほしいですね。
(2007/4/13新設)(2012/3/17 アルバム10枚追加の上全面改稿)</font>



Premiata Forneria Marconi/Storia Di Un Minuto (1971年)

イタリアを代表するプログレッシブロックバンドPFMのイタリアでのデビュー作。タイトルの意味は「1秒の物語」。ギターやフルート、ヴァイオリンなどアコースティック楽器を多用したバロック的味わい、ヨーロッパ的叙情性が、ジャズやロックと絶妙にミックスされたその音楽性は、このデビュー作ですでに確立されているが、世界進出後のサウンドがかっちりと構築されているのに対し、このアルバムには独特の「いなたさ」「ゆるさ」があり、それこそが本作の独自性であり魅力になっている。ヴァイオリンのMauro Paganiは、フルートと兼務で、場面によって2楽器を使い分けてバンドにアコースティックな味わいを付与している。アグレッシブな場面ではフルートをメインに使い、ヴァイオリンの使用は4曲目、6曲目でのストリングス的な扱いが主だったところ。唯一King Crimsonの「21世紀の精神異常者」の影響色濃いアグレッシブなナンバー「ハンスの馬車」で、生ヴァイオリンの神経質な音でアンサンブルに参加しているところが聞き所か。全体としてはヴァイオリンは期待せずにイタリアンプログレの原点を堪能しましょう。

Premiata Forneria Marconi/PHOTOS OF THE GOHST(1973年)

イタリアで発表された2作目「Per Un Amico(友よ)」をPeter Shinfieldがプロデュースし直した本作でPFMは世界デビューを果たした。ロックをベースにクラシックやイタリアの民族音楽、ジャズといった異なるジャンルの音楽、キーボードやギターといったエレクトリック楽器とヴァイオリン、フルート、アコギといったアコースティック楽器といったように異なる様々な要素をパッチワークのように組み合わせてしかもそれを絶妙な構成美で見せているのが本作の特徴。多少線が細く叙情的な部分が濃いため、ロックとしてのドライブ感には欠ける気はするが、その完成度はすばらしい。ただヴァイオリンという点でみると、あくまでクラシック的な部分、またはアコースティックで神経質な部分をになう一要素としてピンポイントで使われていて、全体を通して活躍しているわけではないので注意。3曲目でのヒステリックなソロ、4曲目の穏やかなメロディあたりが聞き所。どの場面でも生ヴァイオリンで線の細い音での演奏となっている。

Premiata Forneria Marconi/THE WORLD BECAME THE WORLD(1974年)

前作「Photos of The Gohst」の世界的成功を受け初めて世界向けにいちから制作されたのが本作。前作が様々な音楽性をパッチワークのように組みあわせてトータルの作品としたのに対し、本作では1曲目が壮大なロックシンフォニー、2曲目が牧歌的ナンバー、3曲目が叙情的ナンバー、4曲目が民族音楽調と曲ごとのカラーがはっきりと出た作品となった。そのため前作のように1曲の中にアコースティックな要素を差し込むという形でヴァイオリンが使われることがなくなり、結果として前作以上にヴァイオリンが活躍する場面は少なくなった印象。唯一メインで活躍するのはラスト曲で、いかにもPaganiらしく生ヴァイオリンがヒステリカルに暴れまわっている。あとの曲ではギターやキーボードとのユニゾンが多くあまり目立っていない。もちろんヴァイオリンの活躍うんぬん抜きにアルバム自体の完成度はきわめて高く、一聴に値する名盤だ。



Premiata Forneria Marconi/Cook(Live in USA・1975年)

名盤と誉れの高いPFM初のライブアルバム。選曲はA面が「Four Hole in The Ground」「Celebration」という民族音楽調のノリのいい曲と、「Just Look away」「Dovo Quando・・・」という牧歌的なスローナンバー、そしてB面すべてを使って「Mr 9 till 5」というアグレッシブナンバーから始まるジャムセッションという構成。「Photos of The Gohst」収録曲の「River of Life」などに聞かれる構築的で繊細な楽曲が意図的に外されているのは、ライブでの完成度を重視してか。アグレッシブでノリのいい曲と静かな曲、そしてジャムセッションと曲、面ごとのカラーがはっきりしているので当然メリハリがついていて演奏自体のクオリティも高い。ただしヴァイオリンの活躍度は少なめで、メインになって活躍するのはジャムセッションの後半10分ほど。ただそこでは、スタジオ盤のアコースティックではなく、エレクトリックタッチの粘り気のある音色でアドリブを炸裂させており、激しく盛り上がっていくジャムの芯をとっている。Jamはそのままソロそしてウィリアムテル序曲へと展開。この部分だけでも聞く価値はある。

Premiata Forneria Marconi/CHOCOLATE KINGS(1976年)

前作「Cook」発表後、それまでメンバーで分担していたボーカルパートに専任のメンバーを追加したPFM。これまでクラシカルな叙情性と構築美が持ち味だった彼らだが、本作では大きくその音楽性を変化させた。クラシカルな要素はほとんど姿を消し、全体的にアップテンポな地中海風歌入りジャズロックといった印象になった。新たに加わったリードボーカルBernardo Lanzettiは、ジェネシス時代のピーターガブリエルといった雰囲気を感じさせるもので、今までの繊細なボーカルスタイルと大きく異なりバンドの変化を印象づけている。インタープレイ重視の楽曲のおかげでヴァイオリンは前に比べると若干存在感を増していて、特に「Harlequin」「Paper Charms」などのダイナミックな楽曲ではPaganiならではのあくまで繊細な音色でありながら躍動感のあるソロを聴くことができる。ただ結局、そういった音楽性の変化をよしとしなかったのか、本作を最後に彼は脱退した。

Premiata Forneria Marconi/JET LAG(1977年)

前作から専任ボーカリストが参加し、そのあくの強いボーカリストの影響によりイタリア色が増加するとともにジャズロックへ傾斜していったPFM。その結果クラシック色が消え、フルート兼ヴァイオリンのMauro Paganiが脱退、 本作では元It's a beautiful dayのアメリカ人ヴァイオリニストGregory Blockが代わりに参加し、前作の方向性を推し進めたこの「Jet Rag」を完成させる。彼のヴァイオリンはPaganiに比べクラシック色希薄でアタックが強くしっかりしたスタイル。時に民族音楽っぽさも垣間見られるがそれが嫌味にはなっていない。初のヴァイオリン専任メンバーということもあって全体的にヴァイオリンの活躍場面が増え、5曲目など前面で活躍する楽曲も登場。ここでのアコースティックフィドルの活躍ぶりは絶品だ。全体におだやかな地中海テイストジャズロックという作風のため叙情味が少ないもののなかなかの好作品となった。ただし残念ながらGregoryは家族がイタリア在住を嫌がったために本作のみで脱退、次作「Passpart」はバンド初のヴァイオリン不在アルバムとなりさらに大きく音楽性を変えることになる。



Premiata Forneria Marconi/Suonare Suonare(1980年)

PFMは、Gregory Bloch脱退後、ヴァイオリンのいない編成で「Passpart」を発表、このアルバムは地中海風の歌をメインとしたイタリアに回帰した内容だった。続いて発表された本作、ジャケットの雰囲気から前作を引き継いだ民族音楽寄りの内容かと思いきや、地中海風のおおらさかは残しつつ全体としては非常にポップな歌ものロックとなった。前作がヴァイオリン不在だったのに対し本作からヴァイオリン奏者としてすでにソロとしてのキャリアも持つLucio Fabbriが参加。全体的に控えめではあるが1曲目のイントロでの伸びやかなヴァイオリン、3曲目のロックンロールでの激しいソロはすばらしい。4、5、6、7曲目のミディアムテンポなポップロックではギターとのユニゾンが中心でソロは少なく残念ではあるが、カントリーロック調な8曲目ではフィドルテイストのヴァイオリンが全編大活躍し高揚感を醸し出している。FabbriのヴァイオリンはPaganiほどクラシックしておらず、そのやわらかで癖のない音色がこのアルバムの穏やかさに寄与している。



Premiata Forneria Marconi/Come Ti Va in Riva Alla Citta(1981年)

Flavio Premoliが脱退し、Fabbriがキーボードも兼務するようになって発表されたのが本作。前作に聴かれた大らかさは消えギターが全面に出て前作以上に普通のポップロックという印象だが、快活でアップテンポなナンバーが多く、キャッチーでタイトな楽曲は素直に聞きやすい。ただしFabbriがキーボードメインになってしまったこともあり、ヴァイオリンの出番は前作以上に減り2曲目と5曲目の2曲のみ。2曲目はエッジのたったギター主体のかっこいい楽曲ながらソロ担当はヴァイオリンでこれがなかなかの熱演なのだが、なぜか音色が変にひしゃげててちょっと気持ち悪いのが残念。5曲目のシャッフルナンバーもソロでヴァイオリンが登場。こちらもエッジのたった音色で短くまとまってはいるが安定したソロ。ただし本当に短い。最後にもう一度最後にヴァイオリンの刻みが出てくるが・・・。全体にどの楽曲も嫌いではないので、これでもっと間奏でヴァイオリンがバリバリ弾いてくれていたら結構な愛聴盤になったのだが残念。



Premiata Forneria Marconi/Performance(1982年)

Lucio Fabbri参加後初のライブアルバム。Fabbri参加後の「Sunaore・・・」3曲、「Come Ti Va・・・」から2曲に、70年代のナンバー2曲、そしてギターとヴァイオリンのソロ部分を別曲としてクレジット。というわけで基本は80年代以後のポップでノリの良いポップロックだが、それはそれでかっこいい好ライブ盤。Fabbriがキーボード兼務になってしまったため、「Sunaore Sunaore」など本来ヴァイオリンが入っていた曲でもヴァイオリンはなし。ヴァイオリンが聴けるのは兼務後の「Come Ti Va・・・」収録の2曲のみ。ただこの2曲では大活躍で、「Si Pu? Fare」ではキーボードをメインにしながらも間奏に入るとヴァイオリンに持ち替えた炸裂したソロを決め、そこから「九月の情景」エンディングにつなげて盛り上げる。そして「Chi Ha Paura Della Notte」では、エンディング部でのヴァイオリンによるバッキングからそのままドラムをバックに白熱ソロパフォーマンスへ。若干粗さもありながらも一気に盛り上げ、さらにヴァイオリンをメインとしたインスト曲へと持って行く展開は秀逸。あくまでキーボード兼務なのでヴィオリンの活躍場面は少なめだが、それでも聴く価値はある。



Premiata Forneria Marconi/PFM?PFM!(1984年)

前作と同メンバーによって制作された本作は当時の最先端のポップミュージックをそのまま演奏しているような作品。打ち込みも交えたクリアな音質のニューウェイブ風のサウンドは、70年代からのファンが聴いたら絶句してしまうかもしれないが、この時代のポップスのアルバムとしては非常に高水準、楽曲は粒ぞろいで個人的には嫌いではない。とはいうもののヴァイオリンという観点ではやはり厳しいのも確か。Fabbriは今まで通りの参加だが、作曲に関するクレジットはなく、どこまで制作に関与したかは不明。それもあってかヴァイオリンが聴けるのはラスト2曲のみ。ビニール感のある粘っこいソロはそれなりにかっこいいが、とってつけたような感じなのも事実。アルバム全体の音楽性、ヴァイオリンの扱いという部分で、最近再発された80年代後半の日本のバンドEuroxのアルバムに非常に似た印象を受けた。産業ロック全盛の80年代ヴァイオリンにとっては受難の時代だったのかもしれない。

Premiata Forneria Marconi/Miss Baker(1987年)

80年代になり通常のポップロック路線に舵を切ったPFMのその路線での最終作で、内容は アメリカの30年代のショーガール「Josephin Baker」をモチーフにしたもの。 ポップなため従来のファンの受けはいまいちだが、前作に比べてバンド作としてまとまっていて演奏力、楽曲ともレベルは高く充実した作品。Lucio Fabbriは4曲でヴァイオリンを聞かせてくれている。登場は少ないものの3曲目の後半でのスピーディなインタープレイ、4曲目「Josephin Baker」で間奏や曲後半のバックで聞かれるエレクトリックのざらついた音色での泣きのソロは本当に素晴らしく、この路線でヴァイオリンが全面参加したアルバムが聞きたいところだ。元メンバーのMauro Paganiがクレジットされているが作詩だけのようだ。



Premiata Forneria Marconi/Absolute live - 1971 - 1978

1996年に発売されたPFMのライブボックスセット。収録されているのはCDごとに、デビュー前後の71年、74年「甦る世界」ツアー、76年「Chocolate Kings」ツアー、77年「Jet Rag」ツアー(1曲のみPasspartuツアー)と70年代を幅広くカバーしている。結果、時期ごとに音楽性が変化していく様が見て取れて非常に興味深い。1枚目では、まだKing CrimsonやJethro Tullのカバーが中心で、荒っぽくも激しい演奏が圧巻。ただしPaganiはほとんどフルートでの演奏。2枚目は「Cook」と同時期、3枚目は「Chocolate Kings」ということでだんだんジャズロック的になっていく様子がわかる。また全体にスタジオ曲よりもJam Sessionの収録時間が長く、Cookの選曲というよりも、当時の彼らがライブではスタジオ楽曲の再現よりもジャムパフォーマンスにメインをおいていたことが見て取れる。そして本作で一番価値があるのがGlegory Block参加時の4枚目。Pagani時代よりもヴァイオリンのフューチャー度が高く、テクニカルなすばらしい演奏が聴ける。音質はどれも、まあまあましな海賊版レベルという感じだが内容は貴重。イタリア版ボックスは4枚目の内容が一部違いFabbri期のライブも含んでいるので注意。またイタリアではばら売りもされているようだ。



PFM/Live in Japan(2002年)

Franz Di Cioccio、Patrick Djivas、Franco Mussidaという3人にオリジナルのキーボードFlavio Premoli が合流して再結成、97年には新作アルバムも発表したPFMだが、 正式メンバーとしてヴァイオリニストがクレジットされることはなかった。代わりにライブにおいては旧メンバーのLucio Fabbriがサポートメンバーとして参加。2002年には70年代以来久々の来日を果たした。 本作はその東京公演を収録したライブ盤。内容はというととにかく70年代の代表曲のオンパレード。当時のライブでは演奏されなかった楽曲も完璧に演奏されている。また、 Paganiはフルートと兼務だったのに対し、今回は専任キーボードにPremoriもいるのでFabbriがヴァイオリンをメイン楽器として演奏。結果としてヴァイオリンのフューチャー度が非常に高くなった。 代表曲網羅なのでベスト盤や入門編としても最適な作品といえる。同内容のDVDも発売されているのでDVDを持っている人は必要ないかもしれないが、イタリア版はPeter Hamilとの競演曲が追加収録されているのでマニアは注意。



PFM+Pagani/Piazza del Campo(2003年録音・2004年発売)

結成30周年を記念してオリジナルメンバーだったMauro Paganiを久々にゲストに迎え行われたライブを収録したアルバムが本作で、CDとDVDのセットで発売された。演奏は「ハンスの馬車」「River of Life」「Four Holes In The Ground」「Celebration」と全盛期のベスト選曲。聴き所はLucio Fabbriも参加しているということで、Pagani、Fabbriのツインヴァイオリン。特にウィリアムテル序曲手前でのツインでのセッションバトルなどは二人ともざらついた音色で弾きまくっていて甲乙つけがたくどちらも非常にかっこいい。また「Four Holes・・・」では弦楽団も参加してのスペシャルライブならではの贅沢な演奏だ。DVDでは動くPaganiが見れてファンには非常に嬉しいが、PAL形式で日本のDVDでは見れないので注意してください。

Mauro Pagani/Mauro Pagani(邦題:地中海の伝説 1978年)

Chocolate KingまでPFMのヴァイオリニスト兼フルーティストを勤めたMauro Paganiが脱退後に制作したファーストソロ。PFMではアンサンブル指向でクラシカルな音楽をやっていたわけだが、このソロアルバムではヴァイオリンをメイン楽器として駆使し、PFMのメンバーにプラスして地中海風ジャズロックバンドとして名高いAreaのメンバーと女性ボーカルTeresa De Sio を召集、地中海音楽とジャズを組み合わせたきわめてオリジナリティの高い音楽を作り上げている。1曲目のアラビア風ダンスミュージックから始まり、民族音楽のイディオムを縦横に使った楽曲はとにかく高密度。5曲目の「木々は唄う」ではスピーディーなリズム隊をバックにareaのDemetorio Stratosの超絶ボーカリゼーションとバイオリンが壮絶なバトルを繰り広げる。バイオリンの音色も、擦過音や弓の翻る音を強調し、民族音楽色が濃いがそれがまた独自の魅力をもたらしている。またPaganiはBouzukiも演奏。とにもかくにもロックの枠を越えた傑作。

Demetrio Stratos・Mauro Pagani・Paolo Tofani /Rock and Roll Exibition(1979年)

イタリアプログレッシブロックの名バンドAREAのリーダーで超絶ボーカリストのDemetrioとPFMのヴァイオリンニストの連名ということで、プログレッシブロックファンは大いなる期待を抱くが、それは見事に裏切られるのがこのアルバム。内容は企画物のロックンロールアルバムで、本当にシンプルなロックンロールが全編演奏されている。ではこのページ的にはどうかというとこれまたはずれ、7曲中ヴァイオリンが聴けるのは2曲だけで、それなりにかっこいいロックバイオリンではあるが、これだけのために買うほどの価値があるというものではないのであしからず。

Mauro Pagani/PASSA LA BELLEZZA(1991年)

82年に発表されたのサントラ盤「真夏の夜の夢」を除くと前作から13年をおいて発表されたMauro Paganiのソロは、歌物エレクトリックロック作品。彼は、ボーカルと作曲、それにブズーキを始めとしてマンドリン、ヴァイオリンなど様々な楽器を演奏している。楽曲はメロディにイタリアっぽいおおらかさはあるものの普通の産業ロックに近いポップなナンバーが並んでいる。正直な感想は悪くはないのだが・・・といったところで1枚目のような独自の世界を期待すると肩透かし。それでも彼のヴァイオリンが全編で聞けるならまだ価値があるのだが、残念ながら聴ける楽曲は3曲のみ。しかもその中でもヴァイオリンがしっかりとフューチャーされているのは4曲目「Ossi Di Luna」のみ。ここでは「Miss Baker」でのFabbriに近いザラッとしたトーンでゆったりしながらも緊張感のあるプレイがかっこいい。ただしPaganiはヴァイオリンという楽器には興味がなくなってしまったのか、2003年発表の新作「Donami」ではまったくヴァイオリンを弾かなくなってしまった。

Lucio"violino"Fabbri/AMARENA(1978年)

Mauro Pagani脱退後のPFMへの参加で知られ90年代の来日公演にも同行したFabbriの78年発表のソロアルバムは、ファンキーなフュージョンサウンドでヴァイオリンをうならせるなかなかなの好作。元々がセッションミュージシャンでキーボードもこなす才人だけに、適度にポップに適度にテクニカルにときわめてバランスが取れている。そのため逆にこの人のという強烈な個性がないとも言えるが、とりあえず聞いて損はない。1曲目からチョッパーベースがうなるファンキーなリズムに叙情的なテーマ、そして粘っこいヴァイオリンソロが炸裂。2曲目は女性コーラスがさわやかなラテンフュージョン。と、楽曲重視でポップで明るい音楽性は中西俊博との共通性を感じさせるところ。7曲目でのヴァイオリンの活躍などもかっこよく、変化に富んだ曲調の中でファンキーで粘り気のあるエレクトリックバイオリンのソロは本当にすばらしい。



Demetrio Stratos & Lucio Fabbri/Recitarcantando(1978年録音・1980年発表)

70年代イタリアを代表するジャズロックバンドAreaのボーカルDemetrio Stratosと、このライブ後の79年にPFMに参加することになるヴァイオリニストLucio Fabbriの2人によるライブアルバム。Demetrioのボーカルはホーミー調のいわゆる「ボーカリゼーション」。文字にすると「うーうーーーーーーー、ヨロレ〜」みたいな感じ。そのボーカリゼーションにFabbriの民族音楽っぽい生ヴァイオリンが絡むというのが基本的な形。ベースとなる楽曲はあるようだが全体的には即興な感じ。それにしても民族音楽+現代音楽といったその内容は、非常に敷居が高い。完全に2人だけの演奏でいわゆるコマーシャルな部分はないのでそういった音楽が好きな人以外は手を出さない方が無難だろう。ただFabbriの生ヴァイオリンの表現力、バッキング力はなかなかすばらしく、同時期にポップスフュージョン的なソロを発表しつつ、このような民族音楽的な演奏もこなせる彼のキャパシティはたいしたものだと思う。



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