アルバムガイド ジャズヴァイオリニスト−John Blake篇

アメリカのジャズヴァイオリニスト。70年代初頭にアーチーシェップのバンドに参加したことからキャリアをスタート、Grover Washington.Jrのバンド、McCoy Tynerバンドでの活動を 経て80年代にソロキャリアをスタートさせた。その音楽性はモーダルなジャズからフュージョン、クロスオーバーまで多彩。ただしジャズに関しては、若干グルーブ感に欠ける印象で、 さわやかなコンテンポラリーなサウンドの方が彼の持ち味が出ているように思う。そういったクロスオーバーサウンドが楽しみたいなら2ndや4th、モードジャズ的なサウンドなら1stやAvery Shapeとの DUOから入るといいでしょう。(2007年7月6日全面改稿)

McCoy Tyner/HORIZON(1979年)

John Blakeは、Grover Washington,Jrのバンドに参加後、名ジャズピアニストMcCoy Tynerのバンドに参加。その時期の作品がこれ、Blakeは5曲中3曲でヴァイオリンを弾き、B面冒頭の「Mother Land」を提供するなど大活躍。ヴァイオリンは後のフュージョンタッチのアルバムでの伸びやかに歌うプレイではなく、線の細いながら割りとしっかりした質感の音使いで、モダンでミニマルなモード系諸楽曲においてフルート、サックスと並んでソロを取っている。未CD化ということでMcCoy Tyner自身のアルバムのうち世間的にはあまり評価の高い方ではなさそうだが全体的にかっちりとまとまっていて聴きやすい。「Mother Land」はAbery ShapeとのDuoでも再演されることや、後のソロでもMcCoy Tynerの曲を演奏するなどを考えるとJohn Blakeのキャリアを語る上でははずせないアルバムと言える。

John Blake/Maiden Dance(1984年)

McCoy Tynerバンドに在席した後、満を持して発表された1stソロアルバム。ピアノにそのMcCoy TynerとKenny Barron、ベースにCecil McBeeと豪華な面子をそろえ、McCoy Tynerバンドに参加していた時期のミニマルでモダンな楽曲から、次作以後のコンテンポラリーな作風につながるさわやかでメロディアスなフュージョン作、またスタンダード曲「Beautiful Love」など幅広い楽曲を収録したアルバムとなった。彼のヴァイオリンの音色は、アコースティックな質感を優先したタッチで、線の細さが感じられこと、また全体的にプレイそのもののビート感、グルーブ感が弱い印象があるが、モードタッチの曲やコンテンポラリーな楽曲では、そういった弱点があまり目立たないため、わりと素直に聴けるアルバムになっている。ただ彼自身もそういった弱点を意識してか次作以後よりコンテンポラリーな方向へと向かう。

John Blake/Twinkling Of An Eye(1985年)

前作のような大物ゲストではなく自己のバンドによる2ndソロ。このアルバムでは「Dat Dare」「Con Alma」というスタンダード2曲を取り上げているもののメインとなるのはJohn Blake作曲によるさわやかなフュージョン曲。スパニッシュ調のアップテンポナンバー1,5曲目やFMでかかっていそうなさわやかBGM風の3,4曲目など。アコースティックタッチの音色でメロディアスに歌うそのサウンドは深みはあまりないもののさわやかで聴きやすく特に5曲目の標題曲などその代表例。一方で上記のスタンダード曲などはやはりジャズとしてのスイング感が足りずやはり物足りない。ラスト曲「Genesis」はミディアムテンポのロックっぽいインストでこれが意外とかっこよい。まあ全体的にいかにも80年代な音だがこれはこれで好きな人は十分満足できるだろう。トータルな印象はフォーライフ時代の中西俊博に近い。

John Blake/Adventures of the Heart(1988年)

多数のゲストミュージシャンを集め前作をさらにコンテンポラリーな方向に推し進めたのがこの3rdアルバム。いきなりAOR調のヴォーカルナンバーで幕を開けて驚かされる。その1曲目他2曲でボーカルを取るのは80年代に活躍したブラコンシンガーGwenGuthrie、また以前Johnがバンドに参加していたGrover Washington,Jrなど曲ごとに多数のミュージシャンが参加している。Groverとは2曲目などで息のあったソロの応酬を繰り広げている。全体的なアルバムカラーは明るく、さわやかな印象で、どの曲をとってもFMのBGMに使えそうな軽やかな印象。ラストでスタンダード「A Child Is Born」を取り上げているが、クラシカルな印象でジャズのスイング感はない。とにかくコンテンポラリーなフュージョンサウンドが楽しみたい方はどうぞ。

John Blake/A New Beginning(1988年)

ニューヨークのVillage Gateでのライブを収録した4thアルバム。Key×2、b,dr、percという編成で、2ndアルバムに通じるFMでかかっていそうなさわやかなフュージョンサウンドを全編で展開。全曲新曲でアフロリズムやサンバのリズムを取り入れたオリジナル曲を演奏、とにかくのりがよくさわやかなサウンドでBlakeのヴァイオリンも伸びやかに歌いまくっている。ライブとは思えない完成度の高さだ。John Blakeのヴァイオリンプレイには、ジャズよりもこういったコンテンポラリーなサウンドの方がずっとあっているように感じる。1曲目のようなあまりにもわかりやすいロディは、甘すぎて聞く人によっては軽すぎるという印象かもしれないが。ただこういったコンテンポラリーな作風はこのアルバムが最後になる。

John Blake/QUEST(1992年)

4年のブランクを置いて発表されたこのアルバムは、前作までとは一転、1st「Maiden Dance」に通じるアコースティックジャズに回帰した内容となった。バックは若手を中心とし編成はp,sax,b,dr,perc、2曲にGrover Washinton,Jrが参加している。楽曲はBlakeのオリジナル曲を中心にバンドメンバーやWashintonの曲、それにコルトレーンのMoment`s Noticeにチャップリンの映画音楽。Blakeはアコースティックな音色で歌心のあるソロを弾いていて悪くないが、やはりエッジの弱さもあっていまいちグルーブ感が伝わってこない。黒人なのにあまりグルーブ感しないイージーリスニングジャズな印象になってしまっている。せっかく軽快にソロをとっているのだがメロディアスで軽い、クラシックの人のサウンドという感じで残念。

Avery Shape & John Blake Duo/Epic Ebony Journey(1995年)

McCoy Tynerバンド時代からの盟友であるベーシストAvery ShapeとのDuoアルバム。アルバムすべてベースとヴァイオリンという2人だけで演奏されている。Tynerバンド時代の「Mother Land」や1st収録の「Movin’up」「Maiden Dance」、Tynerの「Mr PC」「Passion Dance」など、Tyner時代〜1st時代のモーダルなレパートリーを中心に取り上げている。2人だけの演奏ということで、Blakeのヴァイオリンはいつになくアグレッシブでエッジのたったサウンド。いつもきれいな音色でさわやかにソロを取る彼が、こんなかすれた音色で、でこれだけぐいぐいと演奏する姿は新鮮。時々リズム的に甘いときも感じられるが彼のアルバムのなかでは一番ジャズっぽい作品。飾り気のないサウンドはコンテンポラリーな作風を期待すると厳しいが、アコースティックジャズが好きな人はいけるだろう。

Grover Washington.Jr/LIVE AT THE BIJOU(1978年)

99年になくなったジャズ・ソウルのサックスプレイヤーのライブ盤。エレクトリック編成でのソウルフルなサックスプレイが熱い1枚だが、 当時のバンドメンバーとしてJohn Blakeがエレクトリックヴァイオリンで参加。このアルバムでもプレイヤーとして参加するとともに 8曲中4曲を作曲(3曲は他メンバーとの共作)している。ただ、あくまでメインはサックスで、ヴァイオリンは裏方然としていて表に でてくるのは2曲目ぐらい、それもサックスとソロバトルをするといった展開はないのでそのあたりを期待すると物足りない。



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