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Vanessa Mae/STORM(1997年)
イギリス出身の若手女性ヴァイオリンニストのセカンドアルバム。クラッシック出身ということで、このアルバムでもビバルディの四季から「夏」を取り上げ、打ち込みリズムをバックしたダンスチューンへと作り替えている。その方法論は、クライズラー&カンパニーと同様のものだが、オリジナルの楽曲も含めて、よりテクノ的打ち込みリズムの多用が独自性を出している。このアルバムでは全編エレクトリックバイオリンを使いっているが、クリアな音色でその奏法もクラシックそのものである。事実クラッシックスタイルのアルバムも出している。個人的にはプログレバンドFOCUSの代表曲「悪魔の呪文」をカバーしているところが興味深い。
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Vanessa-Mae/THE VIOLIN PLAYER(1995年)
シンガポール生まれの女性ヴァイオリンプレイヤーによるエレクトリックヴァイオリンを使ってのファーストアルバム。クラシックのプレイヤーとして若年ですでに世界的に知られていた彼女だが、この15歳になって発表したこの情熱的で、美しいポップインストルメンタル(アルバムにはテクノアコースティックフュージョンと表記されている)で世界的な成功を収めた。2作目では多彩なアプローチとなったこのポップス路線だが、このファーストでは美しい叙情的なマイナーメロディが全体を通して聴かれる。楽曲は冒頭の「トッカータとフーガ」以外のほとんどをキーボード兼プロデューサーのMike Gattが手がけているが、ラストの「Red Hot」は彼女自身が作曲を共作。これまた美しくもスピード感のある好ナンバーとなっている。何にしてもヴァイオリンファン必聴の名盤である。
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Nigel Kennedy/KAFKA(1996年)
イギリスのヴァイオリンニストのソロアルバム。この人物はきわめて多才な人で、元々クラッシックの超一流のヴァイオリンニストでありながら他ジャンルにも興味を持ち、一方でジャズのアルバムを発表しながらこの極めてロック色の強いソロアルバムを発表した。普通のクラッシック出身者の場合、クラッシックの焼き直し的な演奏に終始する場合が多いが、このアルバムはそうではない。1曲目では、いきなりインド風のイントロから線の太いエレキバイオリンによる泣きのメロディを聞かせ、2曲目ではミディアムテンポのロックと意外な展開が続く。その後も室内楽的小品、ニューエイジ風インスト、そして叙情的なボーカルナンバーでの的確なバッキングと様々な姿を見せる。時に無国籍なそのサウンドの多様性からジャンルわけしづらいが、なかなかの好作品である。
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Catherine Lara/ARAL(1999年)
フランスで長年のキャリアを誇る女性ヴァイオリンニストがディープフォレストと組んで制作したのがこのアルバム。いわゆる打ち込みとサンプリングを多用、きわめて多様な民族音楽の要素を導入したワールドミュージック的楽曲をヴァイオリンが美しく歌い上げる。彼女はフランス本国では有名なアーチストでヴァイオリンだけではなくボーカルもとり、ボーカルアルバムも多数発表しているとの事。このアルバムは久々のインストアルバムなのだそうだ。全体的に漂うエキゾチズムが時にシリアスすぎる感じもするが、まずは完成度の高い名盤となった。
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Doug Cameron/PASSPORT(1997年)
アメリカのワールドミュージック系ヴァイオリンニストのソロ。その音楽性はジャズのテクニックをベースにしながらも、極めてさわやかでポップ。このアルバムでは4年の世界旅行をテーマに、サックスやピアノやコーラス隊などをゲストにテレビ番組やFMのBGMでも使えそうな、どこまでもさわやかな世界を繰り広げる。楽曲は全体的に明るくのんびりとしたものが多いが、リズミカルでかつドラマチックな7曲目や、切ないメロディがしみる9曲目などは個人的には気に入っている。ヴァイオリンはアドリブソロも適度にこなしテクニック的には問題ない。楽曲、演奏とももう少し癖、ひっかかりが欲しいという気がするのだが。
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Doug Cameron/CELTIC CROSSROADS(2001年)
ジャズをベースにコンテンポラリーなインストを演奏するDoug Cameronの現時点での最新作は、
アイリッシュトラッドを題材にしたイージーリスニングアルバム。リール、ジグなどアイリッシュの
ダンスチューンを扱っているが、それらを単純にエレクトリック編成で演奏しているというのではなく、
それらのダンスチューンやそれ風の自作曲をファンク風だったりヒップホップ調だったりクラシカルだったりと様々にアレンジし、
それにアドリブソロをはさんだりドラマチックなインスト曲に仕上げたりという感じで
あくまで彼の音楽世界の素材としてアイリッシュを取り入れたというところか。というわけでアイリッシュ本来のドライブ感や素朴さはないが、コンテンポラリーな音楽としては良質の作品だと思う。それにしてもコアーズやタイタニックのテーマを扱う節操のなさはちょっとなあ。
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Alicia Svigals/fidl(1997年)
アメリカのクレツマーバイオリンニストとして名高いAliciaのファーストソロ。クレツマーとはユダヤ音楽のことで、ジプシー音楽に影響を与えたことで有名。このアルバムに並ぶ楽曲も、そんな東欧との親和性を感じさせるユダヤ的スケールに基づいている。楽曲は大半が伝統的クレツマーで、一部それに基づいたオリジナル作品。ほとんどの演奏が彼女のバイオリンソロによるもので、その独特のスケールによる音楽はうらさびしくヨーロッパ映画を想起させる。バイオリンの音は民族音楽的な擦過音の強いものだ。最近のクレツマー再評価の動きと合わせて評価が高いが、個人的にはこの音楽はちょっとつらいものがある。
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Iva Bittova/Iva Bittova
おそらくポーランドだと思われる女性ボーカル兼ヴァイオリンニストのソロアルバム。1曲のみパーカッションがゲスト参加している以外はすべて本人のヴァイオリンとボーカルのみというシンプルな編成。その音楽は、ヴァイオリンの東欧的なフレーズのリフレインや重音のバッキングをバックに、彼女の民族音楽色や演劇色の濃いエキセントリックなボーカルがのるというもの。その寂しげで荒涼とした音楽は決して難解ではないが聞く人を選ぶ音楽であることは間違いない。悪くはないがアルバム通して聞くのはちょっとつらい。
(と書いていたのですが、実はチェコスロバキア出身の方との情報をいただきました。訂正いたします。そっかあチェコかあ。01/05/28)
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Alfredo de la Fe/TRIUNFO(1981年)
キューバのサルサヴァイオリンニストのソロアルバム。この筋では有名な人だそうでアルバムも他に現在まで多数発表している。
で、このアルバムだが前半3曲はリラックスしたキューバサウンドそのもの。メインは歌で、ソロパートもフルートがとり、
ヴァイオリンはバックのストリングスに専念していて正直がっくり。ただ4曲目以降のアルバム後半では前半と同じテイストの
サウンドながらヴァイオリンが大活躍、特に4曲目などはエレクトリックヴァイオリンのソロが意外にアグレッシブで、
スペーシーなエフェクトも効かしてピチカートなども挟んだりしてかなり面白い。5曲目などもゆったりした曲だが
ヴァイオリン弾きまくりのインストで悪くない。6曲目もなかなか。割とベタにエレクトリックなヴァイオリンの音色と
他のもろワールドミュージックな音とのミスマッチが逆に新鮮だ。こういうジャンルでもヴァイオリンって使われてるというのは
素直に驚き。他にもっと全面に出て弾きまくっているアルバムはあるのだろうか?
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QUETZAL/QUETZAL(1999年)
メキシコのバンドQUETZALはクンビアやサルサといったメキシコ伝統音楽の要素を大幅に取り入れた若手ロックバンド。g、b、drに女性ボーカルと女性バイオリンニストの5人編成。その楽曲はラテン的なのりと素朴で力強いメロディーと歌唱、そしてアコースティックな繊細さが錯綜した不思議な音楽だ。特にバイオリンの参加が異色だが、クラシックをベースにした線の細い演奏は、ミックスの仕方もあるのだろうが後ろに弾いた感じがして、あまり派手ではない。しかし良くも悪くもこのバンドのどこか不安定で神経質な印象は、バイオリンによるところが大きい。個人的にはよりバイオリンの全面に出た音を期待してしまうのだが。
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ELEMENTALES/ELEMENTALES(1993年)
ヴァイオリンニスト、ギター、パーカッションというTORIO編成のスペインのバンド。その音楽性は極めて高く、多彩。アルバムはいきなりフラメンコで幕を開ける。楽器はそれぞれアコースティック、エレキを使い分け、アルバム前半はフラメンコ、SWING JAZZ、ラテンのカラーの強いアコースティックインスト、後半はエレキ楽器を使ったラテンフュージョン的なナンバーが並ぶ。ゲストの参加が無いためか、楽曲の多彩さのわりには全体的に平板で淡泊な感じもするが、その幅広い音楽性、それをこなすテクニックは評価できる。情報が一切無いためどういったバンドなのか判らないのが残念。
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JON ROSE、大友良英/TATAKIURI(1995年)
アメリカのアバンギャルド系ヴァイオリンニストJon Roseと、サンプリングを多用し独自の音楽を展開する日本のギター兼ターンテーブル奏者大友良英によるプロジェクトアルバム。彼らの周辺人脈が多数参加したその内容は、「ショッピング」をテーマに、デパートや市場などさまざまな買い物の場面を選び、その情景音をサンプリング、その上でフリーロック的な演奏が展開されると言うもの。そんな演奏の中、必ずこのJon Roseが裏に表にヴァイオリンをひいている。そのいろいろな音をコラージュした世界はアイディア盛りだくさんでなかなか面白いが、アバンギャルド過ぎて、通して聴くのは正直つらい。他のアルバムではどんなことをやっているのだろうか?
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Anna Palm/Arriving&Caught Up(1990年)
イギリスの女性ボーカル兼バイオリンニストのソロアルバム。ライナーによるとライブでは「バイオリンのジミヘンドリックス」と形容されるほどの激しい演奏をするとのことだが、このアルバムで聞けるのはきわめて内省的で静謐な音楽である。バイオリンはクラシカルもしくはジプシー風だが全体的にダークでゴシックな雰囲気が漂う。特に日航機墜落をテーマにした3曲目などがそれを感じさせる。他の曲もあまり派手にバイオリンソロを聞かせるという感じではない。そんな中2曲目での打ち込みリズムとピアノによるバラードが、唯一コマーシャルな曲だが、ヴァイオリンをわざわざ後ろにひいたようなミックスが効果的で、美しい小品となっている。
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Lois Crayon/Retro(1996年)
このアルバム、会社の近所のレストランでBGMとして使っており、店のレジでCDを売っていたので購入したという経緯のもので正直なところこの音楽自体以外のデータが全くありません。クレジットを見ても彼女以外のミュージシャンがほとんど日本人であり、また録音も日本でされているということぐらいしかわからず。インターネットで検索したところブランドの名前のようでもある。音楽自体はヴァイオリンを中心とし、クラシックに民族音楽の要素も加味したニューエイジミュージックといった感じのもの。時にプログレッシブロックに近い感触も感じさせる曲も。あくまで楽曲主体ということで、ヴァイオリンを弾いていない曲もある。その音色はクラシカルな線の細いものだ。地味な気もするが、悪くはない。
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Laurie Anderson/LIFE ON A STRING(2001年)
ニューヨークアバンギャルド系のアーティストである彼女はその活動初期には、テクノロジーを仕掛けた奇妙なヴァイオリンによるパフォーマンスが評判だったんだそうだ(スピーカー内臓の自動ヴァイオリンっていったいどんなものだ?)が、81年のデビューアルバム以来久しぶりにヴァイオリンをフューチャーしたという、この「孤独と死」をテーマにしたアルバムで聞かれるのは、ちょっと風変わりな趣をはらむ内向的なポップミュージック。全体的にゆったりとしてやさしいその音楽のバックで柔らかい音色のヴァイオリンがなっている。それはテクニックをみせるようなものではなく決して目立つものではないが、アルバムの雰囲気に独特の統一感をもたらしている。
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