アルバムガイド 日本のプログレッシブロック Asturias篇
Tuburar Bellsで有名なMike OldfieldやブラジルのマルチミュージシャンEgbert Gismontiの影響を受けた大山曜のインストプロジェクトAsturiasは、彼のコンピュータープログラミング、 キーボード、ギターに日本のプログレッシブロックバンド新月のギターやドラムが参加、さらにピアノやファゴットなどの生楽器を ゲストに迎え、透明感のある美しいメロディを聞かせるユニットとして90年代初頭に3枚のアルバムを発表したが、93年の"Cryptgum Illusion"を最後に活動を 停止。ところが2004年にアコースティック編成の"Acoustic Asturias"として新譜を発表。それまでのレコーディングユニットという形態ではなく レギュラーバンドとして活動を再開する。さらに2008年には多重録音によるユニットとしてのオリジナル"Asturias"名義で"樹霊"を 発表、さらに2011年にはエレクトリック編成による"Electric Astuiras"としての活動を開始し、現在に至るまで幅広く活動している。


新設しました。(2016.2.3)

Acoustic Asturias/Bird Eyes View(2004年)

Tuburar Bellsで有名なMike Oldfieldの影響を受けた大山曜のインストプロジェクトAsturiasは、彼のコンピュータープログラミング、 キーボード、ギターに日本のプログレッシブロックバンド新月のギターやドラムが参加、さらにピアノやファゴットなどの生楽器を ゲストに迎え、透明感のある美しいメロディを聞かせるユニットとして90年代初頭に3枚のアルバムを残した。そのAsturiasが 10年ぶりにヴァイオリン、ピアノ、ギター、クラリネットという編成で再結成し作り上げたのがこのミニアルバム。 アコースティック編成になっても親しみやすいメロディとロック的なリズム感で作られる独自の世界に変わりはなく、 より曲のよさを感じられる仕上がりとなった。旧曲の再録3曲と新曲2曲が収録されているがどの曲も素晴らしい出来。 ピアノがリズムを刻む上をヴァイオリンとクラリネットが絡むところはまさに絶品である。

Acoustic Asturias/Marching Grass on the Hill(2006年)

前作から2年、メジャーに移籍して発表されたのが本作。編成は前作と同じ。楽曲は、最近のライブレパートリーを中心に、大山氏がゲーム音楽用に作った曲の再アレンジ曲、それにクラシックメドレーとアイリッシュカバーが1曲づつのトータル12曲。この構成については、録音自体は1年前に行われていたものの発表まで間がありその間にヴァイオリンが交代、新しいヴァイオリニストの顔見世と、メジャーからの発表のための一般受けをはかるためカバー曲を追加したという経緯。基本的な作風は前作と変わらずアコースティック楽器で美しいメロディと展開のある複雑な曲をイージーリスニングのように聴かせるというものでやはり素晴らしい。ただ難を言えば、ライブでの激しい演奏に比べて全体におとなしい印象で、特にライブハイライトの「神の摂理に挑む者たち」などもう少し激しさが欲しいという気も。クラシックメドレーは心配したより彼ららしい仕上がりでしたが、 やはり上記経緯もあってかアルバム全体として構成が散漫になってしまった感じもする。とはいえ楽曲自体はすばらしいので是非。

Acoustic Asturias/Legend Of Gold Wind(2011年)

アコースティックアストゥリアスとしての3枚目であり現在までの最新作。前作がメンバーチェンジとメジャーからのリリースということでアルバムとしてはアンバランスになったのに対し、本作は再度のヴァイオリン交代後、時間をかけて制作、発表も自主レーベルにもどったこともあり、アルバムトータルとしての統一感は前作より高い。音楽的にはクラリネットの筒井さんが本作ではリコーダーを多用。その独特のやさしい高音により、トラッド感、古楽感が増した印象。また和風だったり、不協和感が強い楽曲があったり、組曲を導入したりと曲ごとの多様性は増しているが、その一方で、前作までと比べるとキャッチ―なメロディという点では若干後退している感じがする。そのあたりは人によって好みのわかれるところだと思う。

Electric Asturias/Flactals(2011年)

大山曜氏のプロジェクトAsturiasのロックバンド編成でのユニットElectric Asturiasの1stアルバム。80年代のAsturias名義作が、あくまで大山氏の 多重録音をベースにしたスタジオ作品という印象に対し、こちらは同じエレクトリック編成でありながら明確にロックバンドとしてのダイナミズムや ライブ感を打ち出しているところがポイント。スタジオライブといっていいくらいの躍動感、疾走感が非常に魅力的だ。その一方で、音色的な工夫は今一つで、 キーボードのシンプルな音使いやメロディのわかりやすさなどが一つ間違えるとゲームミュージックかと思ってしまうようなところもあり、そのあたりが気になる ところ。ピアノ中心の部分は気にならないのだが・・・。ヴァイオリンは特に際立ってテクニックを利かせるところはないが安定した演奏でメロディアスなパートを盛り上げている。

Electric Asturias/Elementals(2014年)

エレクトリックバンド編成によるAsturiasの2作目となるアルバム。前作と同じく前半は5分〜10分の独立した楽曲を4曲、後半を4パートからなる組曲という構成。相変わらずメロディアスでドラマチックな楽曲と展開はすばらしい。その一方で前作と同様にエレクトリック楽器による録音演奏が全体にベタっとしていて平板な印象。特にパッド系のキーボードの音、エレクトリックヴァイオリンのあまり工夫のない音色などがマイナスの印象。おそらくピアノと生ヴァイオリンを使用したと思われる組曲「エレメンタルズ」Part1が、サウンド面で非常に魅力的な分、他の曲での落差がいたい。エレクトリックバンドというコンセプトを重視してということなのだろうが、そうであるならば楽器の音に工夫をした方がいいし、そうでないのなら電子楽器にこだわらずに生楽器を多様していってもいいのではないかと思うのだがいかがだろうか。

Asturias/樹霊(2008年)

大山曜氏によるプロジェクトAsturiasは90年代に入りアコースティック編成、エレクトリックバンド編成など様々な編成で多彩な作品を生み出していっているが、本作はオリジナルの「Asturias」名義の元、多重録音による組曲に挑んだ注目作。オープニングのアコースティックギターのリフレイン、そしてそれに重なるピアノ・・・から始まる展開はまさに大自然を流れる清流が大きく広がっていくようなイメージを喚起させる素晴らしいシンフォニー。わかりやすいメロディで展開するのではなく、ミニマルなフレーズのリフレインを中心としたことで、よりイマジネーションが広がっていて行く感じは本当に見事。そんなさまざまな楽器が登場し織り重なっていく中、ヴァイオリンも全編というわけではないが、ここぞというところに登場し、印象的なフレーズを紡ぎ楽曲に貢献している。特にアルバム最後の盛り上がりでギターとヴァイオリンが対になってソロをとるところはアルバム最大の聴きどころになっている。



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