アルバムガイド Spanish Connection編

このバンドは編成はギターの伊藤芳輝をリーダーに、タブラというインドの打楽器を駆使する吉見征樹、そしてジプシーヴァイオリンの平松加奈という異色な取り合わせの トリオ編成のユニットです。 中心となるのはスペインのフラメンコですが、それにアラブ、インドなどのユーラシア大陸を横断する国々の民族音楽の エッセンスを加えた独自の音楽を作り上げています。卓越した演奏と魅力的な楽曲。初期はエスニックな雰囲気が 強かったですが、最近はイージーリスニング風の聴き易さも増し、幅広い人気を得ています。

Spanish Connection/Spanish Connection(2001年)

通称スパコネ記念すべき1stアルバム。まず1曲目冒頭、Shaktiを思わせるインド風口パーカッションに驚かされるが、曲自体は物悲しいメロディが魅力的な 彼らのエッセンスの詰まったアップテンポナンバーでまずノックアウト。2曲目にはルンバ風「哀愁のヨーロッパ」4曲目に ギターの名曲「Asturias」のヴァイオリンを含んだアレンジバージョンと一般受けするカバー曲が選曲されているが しっかり彼ら流にアレンジされている。オリジナル曲も比較的わかりやすいメロディアスなものが並び、まずは名刺代わりと わかりやすい曲調の中で彼らならではの音楽性を聴かせているという感じか。それでも高度な技術と音楽性は そこらへんのイージーリスニングなど問題にならない。ちなみにヴァイオリンはクラシック出身ですが、 クラシック風のいやらしさはなく、ジプシー風の演奏は抜群。

Spanish Connection/Caliente(2003年)

スペイン、アラビア、インドをつなぐ音楽性を標榜するアコースティックユニットのセカンド。前作はまず名刺代わりといった感じで ストレートなスパニッシュ風アップテンポナンバーや割と日本人受けするカバーを配してまとめていたのに対し、今作では全体的にスペイン色強い エキゾチックなサウンドで統一されている。ここでいうスペイン色というのは、チックコリアの「SPAIN」に代表される、日本人受け する「スペイン風」ではなく「アルハンブラの想い出」に象徴されるクラシックギター曲に聴かれるエキゾチックなSPAINサウンドである。 というわけで、所謂泣きのメロディ的なものを期待すると、正直すかされるのでそういった向きで聴く分にはあまり薦められない。もちろん 完成度は高いのでそういった音楽に抵抗のない人なら十分満足できるはず。ちなみに1曲目の「Liber Tango」は冒頭のタブラでのインド風オープニングに驚かされるが、そのあとは叙情的に展開するのでご安心を。

Spanish Connection/TRES(2003年)

レコード会社を移籍しての3作目。前作がエスニック色をかなり強く感じさせていたのに対し、移籍の影響か、 このアルバムではメロディを重視し、比較的イージーリスニングよりの聞きやすさを意識した上品な雰囲気に仕上がっている。 印象としては「日本人の手によるわかりやすいスパニッシュ」という色合いが強い感じだろうか。 1曲目のキャッチーなスパニッシュナンバーなどがまさにそれだろう。さらに2曲目などは今までにないフォークミュージックにも 通じる穏やかなもの。タブラもいかにもインドという使われ方ではなく、変わったパーカッションというポジションになっている。 そういう意味ではこのユニットの本来の尖った方向性から外れてきている感じもするが、癖がなく聞きやすいと言う点で 初心者はまずはこのアルバムからどうぞ。

Spanish Connection/陽光の街(2004年)

ずいぶんと短いインターバルで発表されたスパコネの4枚目。前作が聞き安さを意識した楽曲が並んでいたのに比べ、より多彩に 曲によっては実験的色彩が出たアルバムとなった。1曲目から炸裂するインドテイストにまず驚かされる。 2曲目はピアソルンバという名前どおり、ピアソラ的なメロディとスパニッシュの音色にルンバを組み合わせた異色のナンバー。 「陽光の街」は、明るいオープニングとちょっと哀感あるメロディが交わる躍動感が心地よい。(なんとボーカルバージョンも収録) そしてKing Crimsonの「太陽と戦慄」にリスペクトしたと思われる不気味な「Dr.Fripp」が異彩を放つ。というわけで悪くはないが アルバムとしての統一感、これだ、というスパニッシュナンバーの不在にちょっと弱さを感じたりもする。

Spanish Conection/337TYO(2005年)

またまた短いインターバルで発表された5作目。コンセプトは「東京風」ということらしいのだが、聴いた印象は 一言「ジプシーキングスだ」である。ボーカル曲がそれっぽいというのがまずあるのだが全体的な熱さというか、そういった 点だ。ラテンの熱さが感じられるジプシー風、確かに同じ「スパニッシュ風」にもこういう路線もあるとうならされる。 もちろん全部がそういうわけではなく後半など前作までと同様のフラメンコナンバーもあるわけだが若干地味で やはりオープニングから感じられる印象が離れない。全体的にメロディアスで聴きやすいので万人受けしそう。 当然、ジプシーキングスっぽいのが好きな人はいけるでしょう。「鬼平犯科帳」のエンディングが好きだった人は是非このアルバムからどうぞ。

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